*****送信管アンプ製作記*****

100TH

最近、かつての三栄無線の211アンプの改造を依頼され、やっと完成しましたので、参考までのご紹介いたします。まず、改造の趣旨は、近年良質な211が入手困難となっていたことと、これまでにない外観で、音質も211よりもすぐれているアンプが欲しいということでした。そこで、ねらいをつけたのが、100THです。100THのフィラメント電圧は、5V/6.5Aですから、211用の10Vタップは使用できません。そこで、例のスイッチング電源(以下SW電源と略す)なら、5V/10Aの市販品が使用できますが、搭載するスペースがありません。そこで故浅野先生の教えを思い出し、アマチュア精神を発揮して、後部にアルミのアングル板を切って加工して、SW電源用の棚を作ることにしました。アルミのアングル板などは、どこのホームセンターでも扱っていて、入手、加工ともに容易です。かくして出来上がった外観を写真に載せます。回路は、やはり全段直結、838/805などと同様の回路です。直結カソホロ管に、双3極小型パワー管の6BX7を用いましたが、ここは、もう少しパワーのある球で個別にしたかったのですが、シャーシの穴が3個しかありませんでしたのでやむおえないところです。B電源のディレイリレーは廃止して、ダンパー管による遅延回路としました。ダンパー管は、もともとH/K耐圧が高圧使用のため高いので、うってつけです。5AR4などよりもずっと高圧回路に適していて高性能、しかも現在の価格も安いのですから、これを使用しない手はありません。SWオンと共に光り輝く音は、先の250TH同様、外観、音質共に満足できるアンプとなりました。(2013年1月記)


2 5 0 T H

先日、かつての三栄無線さんの845アンプを譲り受けました。そのシャーシーの立派さにほれ込んで、どうせ作るなら一回り大きい送信管がよいと思い、250THに改造することに決め、やっと完成しました。TANGOさんのトランスですから、プレート電圧は1KVが限度で電流も100mA程度としなければなりません。100THならちょうどよい定格で使用できますが、ソケットがUVなので250THとした次第です。シャーシーに追加工を施し、フィラメント電源には、当然スイッチング電源(SW電源)を使用、それがうまいあんばいにシャーシーのケミコンスペースにすっぽり収まり、またチョークも米軍の10H/250mAを使用し、なかなかいかすルックスと自負しています。全段直結で、30W出力、250THにして半分以下の軽い動作ですが、低域の馬力と高域の透明感のある、お気に入りのアンプとなりました。


2000T

Eimac社のガラス球で最大の規格を誇るのが、2000Tです。 2000Tは製造数が少なく、またその大きさ故に、こわれやすく、完全な状態の2000Tには、新品、中古を問わず、まずお目にかかれません。日本の日立、東芝あたりでもEimacの互換球を製造していましたが、それも1500Tまでで、2000Tは製造されなかったようです。そんな、虎の子の2000Tを使って、いっちょうかるーく、モノラルアンプにしてみました。
まず、このクラスの送信管ならブースターアンプにと、誰しも考えることでしょう。今回はプレート電流を250mA以上と大きく取りたいので、市販のOPTには適当なものがありません。特注される方も多いようですが、高圧使用で大容量のものは高価となりますので、自分なら、ここは例のクラーフ結合とするのが定策です。 30年以上も前に入手した、東立通信工業の25H/350mAのチョークコイルが、いよいよ出番です。高圧はオイルコンでカットしますので、PPのOPTがシングルで使用できることになり、タムラのF2012を使用することに決めました。電源は、かつて製作した212E用、1500V電源を使用します。シャーシーをどのように作るか、考えるのも楽しいものです。かくして出来上がったアンプの写真を載せます。
ブースターアンプですから、ミニワットの71Aアンプの音が、ど迫力のパワー感のある音に変身して、びっくりです。
これは何も音量だけの問題ではなく、スピーカーを駆動する能力が格段に向上したからに他なりません。スピーカーを駆動する能力とアンプの最大出力とは必ずしも比例するものではなく、KT88PPの100Wアンプが、3極管20Wアンプよりも駆動能力については劣ることが多いと感じています。それで、KT88などのアンプでは、パラPPや、かつてのオーディオリサーチ社のD250アンプのように、4パラPPとし、スクリーン電源にもKT88X2で安定化するなどの対策をし、1台のアンプで合計20本ものKT88を用いても、機器が不安定になる要素が増大するだけで、音質については一向に不満は解消されないといった悲劇が起きるのです。シングルで大きな出力が取り出せれば理想的で、それには大型送信管しかない、と感じています。
ぜひ、大型送信管で、ブースターアンプを製作してみてください。
(2013年4月記)




W E−3 5 7 A

WE−357Aは、プレートロス300W、μ=35、トリタンフィラメント10V/10Aで、RCA系ですと833Aに相当します。しかしながらWE−357Aは、そのカッコウが面白いので、昔から人気があります。真空管マニアの旦那さんに連れられて弊社に来られた若い奥さんは、357Aを一目見るなり、なに―、これ、宇宙人みたい!!、と叫ばれたのには驚きました。なるほど、よく見れば、あのウェルズのSF小説に出てくる火星人に似ていますね。

さて、357Aはソケットが特殊ですので、自作しました。3−1000あたりのソケットのコンタクトが流用できます。プレートキャップは、807用で間に合います。フィラメント電源は、SW電源を使用。SW電源をフィラメント電源に使用することで、この種の大型管アンプは、実に作りやすく、かつ高性能になりました。以前は、SWノイズなどを心配して躊躇していた方々も、今や積極的にSW電源を使用するようになり、最近では、300Bの様な受信管クラスでも使用しているアンプもあり、こちらが逆に驚かされます。

さて今回も、プレートロス100Wほどで軽く使用して、OPTも市販品である、タムラのF−2013を使用しました。出力は、30Wほどですが、同じ出力の845アンプなどと比べても、明らかに出てくる音に迫力があります。規格に余裕が十分すぎるほどあるからなのでしょうか!? また、F−2013と357Aの相性が抜群に良かったせいかもわかりません。OPTでは個人的には、タンゴのX−10Sよりも好みの音です。F−2013のような優秀なOPTが市販されている日本は、まさに管球アンプの天国のような国だなあとつくづく思います。グリーンハンマートンのシャーシーに、トリタンの輝きが映えて、これまた、お気に入りのアンプとなってしまいました。〈2013年6月記)





838/805/DET−16 コンパチブルアンプ

1970年代の管球オーディオ誌上で、ステンレス鏡面仕上げシャーシーをうたっていたメーカーに多摩サウンド社があった。その美しさにあこがれて弊社にもそのアンプが、今でも2台置いてあるが、先般、さらにそのシャーシーのみを入手した。このシャーシーは見れば見るほど、その仕上げの美しさに感動させられる。当時は、腕の良い職人たちがいたものだと感心する。30年以上経過したのに、この輝きである。このシャーシーを使って、ほかにはないようなアッというようなアンプはできないものかと思い立ち、このアンプを製作してみた。

弊社に既にある2台とは、オリジナルの211アンプ、もう1台は、813の直結アンプに改造したアンプがある。同じ球では面白くないので、これまでに製作した送信管アンプの中でも、とりわけ製作しやすい、838が良いと思い、さらにこの同等管である、805はもちろん、さらに上位の、英国系の、DET−16も使用できるように考えてみた。WEファンなら、もちろんWE−331Aも使用可能である。

838と805は、805が、トッププレート電極というだけで、規格は同じである。ところが、DET−16はフィラメント規格が、10V/5.5Aと、大飯ぐらいである。トランスのフィラメント巻き線容量が不足して使用できない。そこで、当初より考えていたSW電源を使用することにした。SW電源は、負荷が変化しても、電圧変動がないので、DET−16でも、何の調整もなしで、そのまま差し替えられる。さらに、SW電源を使うことにより、ハムバランサーが不要になり、音もよいことが最近かなり周知されてきた。これを使わない手はない、ちょうど、シャーシーのケミコンスペースが空くのでここに配置できればよいことになる。ハムバランサーはともかく、バイアス調整用の可変抵抗器は、数年後には必ず接触不良、いわゆるガリが起きるので使用しないほうが良い。本機は、入力VR以外のVRは無いので、どの球を装着しても調整は全くする必要がない。

折しも、タンゴトランスの後継者であった、ISOトランスも、今年9月限りで廃業するとの情報を得て、大至急、ISOの鈴木社長にお願いして、X−10SFほか一式を製作していただいた。かくして完成したのが、写真のアンプである。ボンネットも、X−10S用に、背高のものを特注した。

さて、DET−16は、805のようなトッププレート電極だが、球が一回り大きく、フィラメント規格も、10V/5.5A、プレートロスは、125Wと大きくなっている。 DET−16には、GEC社のほかに、英国EDISWANなどがあり、古いものには、板プレートのものもある。AT200も同等管である。
いずれもハイμ管であり、これらのハイμB級管の音の特徴はというと、重厚かつ明瞭なトーンが共通しており、845や211などの、ローμ管とは一味違った特徴がある。 (2013年9月記)








TAYLOR T−55 シングルアンプ

811Aシングルアンプを2台所有しているので、そのうちの1台を他の送信管に改造できないかとの相談が弊社のお客様から持ちかけられました。811Aと同じクラスの球には、例の808や800などがありますが、ちょっとだけ珍しい球に、T−55という送信管があります。開発は、米国のTAYLOR社で、他には、T−20やT−40などがあり、ご存知の方も多いと思います。今回は、CBS社のT−55を用いて、整流管には5AR4が2本使用されていたところに、片波の水銀整流管の、866JRを用いて、音も良し、見ても楽しいアンプに仕上がりましたので、掲載しました。

本来811Aなどの送信管は、大出力を得るためにB級プッシュプル動作で用いるのが目的で開発された球です。 代表的なアンプとして、ALTEC社の有名な1570Aの811PPアンプがあります。しかし、音質的には、A級動作としたいところですので、グリッドをプラス領域で使用できる、A2級直結回路で使用します。このアンプの原型は、かつてMJ誌で紹介されたS氏の811Aシングル直結アンプです。

この回路は簡単な回路ですが、いや簡単な回路だからこそ、いい音がするのだと思います。811AなどのB級送信管は、パワーグリッド管とも呼ばれて、もともと直結回路で使用するのに適しています。、つまり、グリッドはプラス電位領域で使用する球ですので、カソホロ管のカソード電位を積極的に利用できるわけです。古くは、6AC5のダイレクトカップル回路が知られており、これの応用回路といえます。

さらに、このアンプの目玉は、なんといっても866JRの動作中の姿でしょう。866JRは、866のちょうど半分の規格ですので、このぐらいのアンプでしたら、おおげさすぎずに使用できます。青白く光る水銀整流管は見るからに楽しい球で、秋の夜長を楽しむにふさわしいアンプとなりました。(2013 10月記)





RCA−809 PP ステレオアンプ 

台形のマッキンアンプ型ステンレスシャーシを使用して、送信管809をPPでアンプを組んでみた。 809はトリタンフィラメント、プレート損失25Wの3極送信管である。 
フィラメントは6.3V/2.5Aと手ごろなので、SW電源を用いなくても市販のパワートランスで充分間に合う。 
809は、μ=50なので、プラスバイアスの直結カソホロでドライブする。目いっぱい使えばPPで100Wは出る球であるが、コンパクトなシャーシーなのでいろいろ制約がある。

今回もMT管で最も強力な7044でドライブするが、それでも809にとっては控え目な使い方となる。今どきの真空管アンプは出力の大きさよりも、音質と美観を優先したほうが商品価値は高いといえる。計測の結果、無歪最大出力は30W、限界出力は50Wであった。 
構成は、初段の6922のSRPPから、6414のムラード型位相反転を経て、7044でカソードフォロアーとして、809に直結するメーカーRCAの推奨する標準的な回路だ。 このようなシンプルで標準的な回路のほうが、安定性、さらには音がよいと思う。 初段を差動型とするとマイナス電源やVRが必要なので止めにし、経年変化の大きいVRや発熱の大きいホーロー抵抗などは排除して、内部は、小型CR類と、ハムバランサーがLとRの2個、チョークコイル5H/300mAと7044用電源のチョーク10H/50mAのみである。
無歪出力は、30Wほどであるが、入力を入れていくどんどん出力は増加し、50Wほどで、それ以上増えなくなるが、これは、7044が限界になるからであろう。
送信管を使って、コンパクトなステレオアンプとしてみたが、KT88やEL156アンプにはない魅力を持ったアンプになった。
809にはセラミックの白いタイトベースのものと、茶色のマイカノールベースのものがあるので、両者の写真を載せておく。これら以外にもいろいろなベースやプレートの色のものが多数存在するので、これはこれで、結構、楽しむことができる。(2019−9月)