***送信管シングルアンプ製作例***

EIMAC 750TL シングルブースター モノラルアンプ 

去る8月29日、富山県のオーディオクラブのヒアリング会に出かけてきた。コロナ禍の中、感染予防対策を徹底して行われた、マスク着用、席も広々と間隔を取り、また会場入り口は開放されていて安心感があった。
さて、注目したのは、851アンプ、1000Tアンプのお題目があったことだ。行ってみると、蒸気機関車D51風のシャーシに組み込まれた、851アンプが、そこにあった。最初は、スピーカーシステムのタイムアライアメントについて、の項目では、その851アンプで行われ、長時間851アンプの音の良さを堪能した。

1000Tアンプが、会場に見当たらないので、お聞きしてみると、取り止めとしたとのこと、アンプの不具合なのか、感電事故を恐れてなのか、わからなかった。 多くの人が集まる会場では、アンプの感電防止対策は必須だ。 その点、自分のアンプはその対策は皆無なので、大勢の人前で鳴らせるアンプではない。感電防止対策の必要性はわかってはいるが、アンプの美観を損ねないように感電対策を施すのは実に困難でコストもかかる。今回のSL風シャーシの851アンプは感電防止対策とアンプの美観が両立していたのには、大いに勉強させられた。

今回は、EIMACのタンタルアノードの送信管でも、大きいほうの、750TLだ。 フィラメントはトリタンで、7.5V/23Aもある。 TLとTHの違いは、増幅率μの大小による。 TLはローミューの部類で、15である。
さて、このクラスの球は家庭用としてなら、ブースターアンプとしたほうが扱いやすい。ドライブ段を1つのシャーシに同居させると、ノイズや電源ドリフトなどの影響を受けやすいからだ。

そこでドライブには、手持ちにUTCのドライバートランス、LS5があるので、これを使用した。LS5は、一次Zpが、600Ωで、2次が、2KΩとなっている。 これでは、1:1+1となり、ステップダウンではないので、パワードライブできるかどうか不思議に思うだろう。 しかし、UTCのマニュアルには、B級ドライバー用と書かれており、しかも適合パワー管は、805,838、ZB120PP用とある。UTCのリニアスタンダードLSシリーズであるから、f特も申し分ないはずである。これは試してみる価値がありそうだ。

そのようなわけで、製作したアンプを掲載する。 例によってクラーフ結合方式とする。 このクラスの球となると、やわな部品ではダメで、OPTには、811の3パラPP用500Wと書かれた、1次が4.2KΩPP、2次が10と15Ωの出力トランスがあったのでこれを使用した。 アンプの外観写真を載せておこう。例によって大艦巨砲主義の象徴のようなアンプとなった。

ドライブアンプには、以前に製作した、UTCのLS55を用いた300BのPPアンプがあったので、そのLS55の500オームの出力端子を使用して聴いてみた。300Bの音質に透明感と馬力を付け加えた感じとなり、2Wのドライブパワーで、16オーム負荷で120W/1KHzマークした。もっとパワーを入れれば出力は増えそうな気がするが、これ以上入れると歪んでくるのは、LS5が原因しているのであろう。LS5は、B級アンプのドライバー用としては、必ずしも十分ではないが、開発された1935年から1970年初めごろまでの長期間、UTC社のカタログに、ずっと掲載されていたところをみると、既存のアンプをパワーアップしたいという市場のニーズがかなりあったからだろう。
750TLとしては、定格の半分以下となってしまったが、それでも家庭で聴くオーディオアンプとしては十分すぎるほどのパワーであり、このぐらいで十分だろう。


そうこうしているうち、ふと手元にLUXのマッチングトランス、3334/50Wが、2個あることに気が付いた。16Ω出力を、そのまま600オームに接続するよりも、マッチングトランスを通したほうが、メリットが大きい。これを用いれば、ほとんどすべての既存のアンプを、この750TLアンプに接続できる。 多少のロスがあっても、このハイパワーアンプなら問題ない。既存のいろいろなアンプが使えるメリットのほうが大きい。さっそく、マッチングトランスBOXを製作して、71Aや45、2A3、VT25やVT52,35Tなどのアンプを聴いてみた。 たかだか2〜3Wのアンプが、驚くほどパワフルなアンプに変身する。

これに気を良くし、さっそくステレオとするべく、もう1台の750TLアンプのシャーシ製作に取り掛かろうと思う。(2020−9月記)







RCA−851 シングルモノラルアンプ

RCA社の自然空冷式3極管の中で最大級なのは、849と851である。 フィラメントはトリタンで、849が11V/5A、851が11V/16Aである。 最大プレートロスは、それぞれ400W、600Wである。とりわけ、851は、実に魅力的な球だ。851のグリッドは、パワーグリッドにふさわしく金網状になっている。増幅率μ=20 であるが、内部抵抗は低く、そのためプレートは平たく薄い板状となっている。 このクラスでは円筒形のプレートが多い中で珍しく板状でオーディオ管の流れを汲んでいるようだ。 600Wもの板状であるから広い面積を有し、いかにもよい音がしそうだ。 製造メーカーによっていろいろな内部構造の851が存在する。 RCA、GE、UNITED、AMPEREX、WH社などで、皆それぞれ特徴が異なり個性的だが、通常はカーボンプレートであるが、ニッケル板プレートも存在する。いずれも精巧で緻密な構造をしていて、見る者を圧倒する。 日本でも、1940~1950年にかけて、UV−851の型式で製造されていたが、米国の851より一回り小型にできていた。また、驚いたことに、同じ頃、ドイツのテレフンケンでも製造されており、型式は、RS−285である。これは、マニュアルでしか見たことが無いが、プレートはRS−237と同じ材質でメッシュ状であり、またフィラメントはトリタンの上下8点吊りの16条張りであるから、実物を見たら、さぞ驚嘆させられるだろう。ひょっとしたら米国よりも先に開発していたのかもしれない。ただし後期になるとメッシュプレートではなくなり、形状も一回り小型となった。 とにかく幻のRS−285ではある。

さて、851は、いわゆるオーディオ管の部類に属するが、851の規格表によると、最もひかえめな推奨動作例ではA1クラスシングルで、Ep=1500V Vg=−49VのときIp=175mAとなり 負荷Rp=3.7KΩの時に、出力Po=46Wとある。 これなら市販のOPTでも使用できそうだ。タンゴあたりの、X−3.5Sでなんとか間に合う。 ただしプレート電圧が1500Vは、アマチュア向けのトランスではぎりぎりの電圧である。 メーカーでは2KVの耐圧試験はクリアしているものの、長期間、2KVで使い続けてよいということではない。 規格表の推奨動作例の1つ上の2KVの動作では、Vg=−65V Ip=270mAとなり、RL=3.1KΩで出力は100Wとある。 この場合は、279Aの時のように、クラーフ結合とするのがいいだろう。 クラーフ結合方式はシングルOPTでは得られない馬力のある音質が魅力なので、ぜひ挑戦したいと思う。 まずは手始めに手元にX−3.5Sがあるので、一番控え目な動作としよう。

アンプの構造は、861アンプと大差はない。279Aアンプよりはコンパクトに仕上がる。 電源部は別シャーシとする。この電源部は861アンプでも共用できる。アンプごとに電源を用意するのはたいへんなので、1KV、1.5KV、2KVと電圧ごとに用意して共用すれば効率的である。アンプ本体には、フィラメントとドライバー段の電源を載せればよい。

計測の結果、16オームダミー負荷で、1KH正弦波0.1V入力で5W,0.2V入力で20W, 0.3V入力で、40Wとなる。 まだ無歪状態であるが、0.4V入力では歪みはじめる。 しかし、出力56Wなので、OPTが飽和状態となり、うなりはじめて危険でもあるので、ここで止めることにした。 この辺が、タンゴのX−3..5Sの限界であろう。残留雑音は、このクラスのアンプとしては驚くほど低くなり、無帰還でも、1.5mV以下であり、ALTECの604でも、ほとんどハムは聞こえない。いつまでも聴き込んでしまう音だ。思うに、円筒形プレートよりも平板プレートのほうが、雑音が低くなる傾向があるようだ。すぐに、もう1台製作してステレオにしたい球だ。 (2020年4月記)






WE−249B/258B電源装置

RCA851用アンプ用に電源を製作した。DC1500V/200mA取るために、UTCの3000VCTのトランスを使用した。UTCのトランスは、CGシリーズが円筒型をしていて、カッコイイと思うマニアも多いようだ。
例によってダブルチョーク仕様だ。整流管には、WE−249B/Cや258B/Cを使用する。249と258との違いはソケットだけだ。249はUXソケットだが、258のソケットは自作以外に方法が無い。ただ、球のほうはというと、258のほうが、バリエーションが豊富で魅力的なものが多い。(2020−5月記)







WE−279A シングルモノラルアンプ

WE社の自然空冷式3極管の中で最大級なのが、251Aと279Aである。 フィラメントはトリタンで、251Aが10V/16A、279Aが10V/20Aである。 最大プレートロスは、それぞれ1000W、1200Wであるが、Aクラスアンプに使用する場合は、60〜80%で使用する。 増幅率μ=10 であるから、送信管でも、211や845などの、いわゆるオーディオ管の部類に属する。 279Aの規格表によると、推奨動作例ではAクラスシングルで、Ep=2500V Vg=−170VのときIp=300mAとなり 負荷Rp=4.5KΩの時に、出力Po=155Wとある。 ここではもう少し控え目な、Vp=2000VとしてIp=250mAになるように、Vg=−125Vの動作とし、Po=100Wを目標にする。 このようにメーカーの発表による推奨動作例があると設計はたいへん楽になる。その通りに製作すれば必ずうまくいくからだ。

使用するパーツについて触れておこう、まず、電源部は別構成とする。OPTは、このクラスとなると、市販品のシングル用OPTでは使い物にならないので、クラーフ結合として、タムラのPP用OPTをシングルで用いる。直流電流を重畳しないのなら、PP用OPTをシングルで使用できるからだ。タムラのF−2012は公称出力100Wだが、実力は2倍以上あると聞いたことがある。 では、大出力のPP用トランスについてふれてみよう。タンゴやタムラのPP100W級はありふれていて、実は面白くない。 できれば、ALTECのA270アンプ(813PP270W)や、オーディオリサーチ社のD250(250W)アンプに使用されたPP用OPTがあれば理想だ。実は何台かを過去に入手したが、すでに売ってしまって手元にない。アメリカのUTCや、THORDERSONには、それらをも上回るOPTが存在したようだが、今となっては入手困難であろう。 次に、チョークコイルは、変調用塞流線輪があったのでこれを使用した。銘板に変調用とわざわざ明記されており、クラーフ結合には最適な塞流線輪と分かる。 直流カットのためのコンデンサーとチョークには、2KVの高圧がかかるので耐圧には十分配慮しなければならない。 さて、肝心なドライブ段だが、VT52のPPとした。ここは、2A3あたりでもよいがWEの球を使用したいところだ。

このアンプでは、電源部は別構成とする。そうしないと重くなりすぎ、裏返しての調整さえままならなくなる。 まずは、実験用の最大2400V/600mAの実験用電源があるので、これでテストする。 負荷は16Ω/200Wホーロー抵抗である。 規定電圧を印加して、まず、入力をアースして残留雑音を計測すると、8〜10mVも出ている、これでは使い物にならないので、いろいろやってみてやっと、2〜4mVになった。ドライブアンプ部分のVT52は交流点火では、無帰還で2mV以下にならないので直流点火としなければならない。 ドライブアンプが本体に同居しているので影響を受けやすいようだ。 さて、入力に1KHzのサイン波を入れていくと、0.1Vの時16オームダミー負荷のところで25V出ている。よって、出力は42W、きれいなサインウエーブをしている。さらに40Vになるまできれいな波形で、歪んでいる様子はない。40Vはすなわち、16オーム負荷で100Wの出力であるので目標は達成できた。100WでもA1動作の状態であるが、さらに入力を入れていくと、どんどん出力は増大し、A2級動作となり、波形は上下均等につぶれていくが、ダミーの両端で、なんと60V+まで増大した。60Vとは、なんと225Wである。うちのダミー負荷は200Wのホーロー抵抗であるが、かなり熱くなってきたので、この辺で止めた。 これでタムラのOPTの実力が図らずも200W以上あることも実証されたことになる。
だが実際、家庭で使用するためと安全を見て、もっと電圧を下げて1500Vとしてみた。 最大パワーは、160W程となったが、その差は、まったく感じられないので、この仕様で、もう1台製作してステレオとしたい。
さて、アンプの構造については、さきの861アンプのように、支柱が必要だ。電極には、以前、送信機を解体した時に出たパーツを使用した。たしか、NEC製の833が4本使われていた送信機のアンプ部分から取り出したもので、タイト製の支柱や電極などである。入手可能なものをできるだけ活用してこそ、アマチュア精神といえるだろう。これらのパーツもそのまま使えるわけではなく、追加工などの工夫が必要だ。

私の知る限り、279AにはWEとAMPEREX社の2社が存在する。MACHLETTE社は、WE社の送信管部門であるので、WEそのものである。面白いことに、WEとAMPEREXでは、管球上の文字の向きが異なる。WEでは、フィラメント端子側が上部になるが、AMPEREXでは、フィラメント端子側が下部になる。 動作させる場合、どちらも垂直に付ければ問題はないようなので、マウントした時の文字の向きを気にしないなら共用可能である。また、AMPEREXの279Aは、やはりカーボンプレートである。ここでは、まずWE仕様としてみた。球本体がしっかり固定できて、工具をなるべく使用せずとも簡単に着脱可能とするのがコツである。(2020年4月記)








861 シングルモノラルアンプ

送信管の中の送信管とでもいうべき球が、4極送信管のRCA861であろう。 形状からしてオーディオアンプには、いかにも使いにくそうだからである。 しかしトリタンフィラメントで煌々と輝き、プレートの材質はタンタルで400Wもある。実に魅力的だ。 送信管アンプマニアなら、ぜひアンプに仕立てたいと思うだろうが、まず、どのようにシャーシーにマウントするかを思案する。それが困難であればあるほど、この861はアンプビルダーたちにとって、最もやりがいのある球の1つなのだろう。

初めて、861を見たときに、その異様な形状に驚く。非常に手間のかかる製造工程で作られていることが見て取れる。胴体は球状だが、そこからアームと呼ばれる部分が横に突き出ていて、プレート電極を支持している。 随所に緑色したウランガラスが使用されていることからしても、コスト度外視の製品だと見て取れる。同じ形状の球が太平洋戦中、また戦後に日本でも製造されている。型式は、やはり UV−861だ。 だからこの構造が理想なのだろう。861をファイナルに使用した、1941年頃の米軍の送信機があったと聞く。当時を知るアメリカ人はこの送信機を、かつて日本との戦争の激しかった南太平洋の島々に、アメリカ本土から何十台も送り出したと話す。 彼は、そのうちの1台を今でも所有していて、インターネット上に写真を載せている。いまや博物館級の送信機だが、見るからに、軍用の当時モノといった貫録で、複数の予備球まで付属しているという。マニュアルも立派なものだ。アンプ名は、TRANSMITTER TAJ-19 である。Google で検索すると出てくる。

さて、861でオーディオアンプを製作した人は、私の知る限りでも、今までに5〜6人と結構いらっしゃる。4極管なので、ダイナトロン特性があるが、1KV程度なら問題なく使用できる。スクリーンの損失も大きいので、1KVの3極管接続も可能だ。 またフィラメントも11V/10Aだから、SW電源が使える。先日、861でアンプを製作した方から写真と最適なオペレーションまで教えていただいた。3極管接続として、Ep=1KVで、Vg=−50Vの時、プレート電流は、約Ip=100mAとなる。つまり、211と大差ない値なので電源も容易に製作可能だ。 その時の最適負荷インピーダンスは、3〜5KΩとなる。その方は電源部と増幅部を分けて、ステレオとされたが、自分はモノラルで、さらに電源部を分離した。少しでも重量を減らして小型化して運びやすくしたかったためだ。テスト用の可変電圧電源でテストしたところ、十分なパワーと周波数特性が得られた、同じ30W出力のアンプでも、KT88と211では明らかに音質が異なるように、861アンプは211よりも重低音が出るような気がする。これに気を良くして、ステレオとするべく、もう1台の製作に取り掛かろうと思う。

ところで、RCAのマニュアルによると、861のプレートは、定格出力時に、オレンジから赤色になると書かれている。それには、プレートロス200から300W以上とする必要があろう。そこでEpを1500Vにあげて、電流を150mAほどで実験してみたいと思う。球状のガラス内部に、オレンジ色に赤熱したプレートとなれば、考えただけでわくわくする。 (2020−1月記) 






STC 5C/450A シングルモノラルアンプ

太っちょのうさぎさんの愛称で知られる、STCの5極送信管、5C/450Aを用いたシングルアンプを製作した。 5C/450Aは、ご覧のように、プレートとサプレッサーグリッドG3が、管球の頂上に2本突き出た形状で、いわゆるサプレッサー変調用だ。
起源は1940年代のドイツ、テレフンケンの、RS−384 あたりだが、日本でも、P−220やP−250、さらにはP−680などのP管として普及したので広く知られている。 小中出力用だが変調効率が良いので、送信機が小型にできる利点があり、欧州や日本ではかなり普及したが、大出力では調整が難しい面があり、国土の広い米国では、あまり普及しなかったらしい。そのためかアメ球のP管は見たことがない。

さて、この5C/450Aは、トリタンフィラメントで10V/12A、プレートが450Wという球である。 スクリーンG2が600Vでも深いマイナスバイアスとなり、1KVでG1バイアスー100Vで200mAも流れる。それならというわけで、TOPは、6SN7GTのSRPPとし、ドライブ段は同じSTCの12E1のトランス結合とした。 バイアスの深い球にはトランス結合が簡単で最適であろう。重量の点からも、モノラルで2台製作したほうが好都合である。未知の球なので、今回は、タンゴのX−5Sを用いて、電流も150mAほどで軽く使うことにする。 P管の場合、スクリーンのG2をどこにつなぐかで、特性がかなり変わってくる。プレートにつなぎ3極管接続とすれば、内部抵抗の低い3極管となり、650V電圧で、15W出ることを確認した。もっと電圧を上げたいがスクリーンの最大電圧は、650Vとある。5極管としてスクリーンに600V程度としてプレートに1KVかければ、最大出力は、30W程度となった。さらには、GIとG2をつなげば、内部抵抗の高い球となる。プレート損失は450Wもあるわけだから、極めて内輪な使い方で、本来なら、1.5KVで250mA程度流し、50W出力としたいところなのだが、この場合、クラーフ結合とする必要があるので次回に譲ることにする。
上部のキャップとソケットは自作した。いずれも、真ちゅうパイプを電極として利用する。いかにして恰好よく、また十分なコンタクトが得られるように製作するかが、アマチュアの腕の見せどころである。、たとえば、プレートキャップのリード線などは、キャップの真上から引き出すとカッコわるいので必ず横から引き出す。また、212Eなどと同じソケットなので、市販品でもよいが、今回は、30mm厚のベーク板に真ちゅうパイプを打ち込んで自作した。30mm厚のベーク板に15mmの穴を開けるのだが、この作業はボール盤での手作業は危険である。この場合は、旋盤で加工する必要がある。今回は、600Vの3極管接続とし、コンパクトなアンプとした。最大出力は、わずか15W程だが見ても聴いても楽しめるアンプとなった。(2019−2月記)






75TLシングルステレオアンプ

75TLは、プレートロス75Wのタンタルアノードの3極送信管である。以前、PPとしたアンプを製作したが、やはりシングルでの音が聴いてみたくなり製作した。トリタンフィラメントはステンのシャーシにピッタリで、美しいアンプに仕上がったと自負している。

75TLは、211並の規格なので、設計製作は簡単だがプレートロスは最大75Wと小さいのでこれを超えないように注意する。
タンタルアノードは赤熱させることで、音の透明度が一段と増すことを経験しているので、アノード電圧900V、電流は65mAと設定した。75TLはプレートロスが50W程度で赤熱する。

フィラメントは、5V/6Aなので、SW電源を使用する。SW電源を使用する場合、ON時のフィラメントへの突入電流対策は必須である。この対策無しで、容量の大きいSW電源を使用すると、何度かON/OFFを繰り返すうちに、フィラメントを焼損する恐れがある。また発熱とノイズ対策も重要で、狭いシャーシー内に押し込んではトラブルの元である。そこで今回はフィラメント電源は別筺体として、ケーブルでアンプ本体と接続するようにした。このフィラメント電源は、別のアンプにも使用できるというメリットもある。 






254W シングルステレオアンプ

Eimacの直熱型3極管、254Wを用いたシングルステレオアンプを製作した。254Wは、本家はガンマトロンであるが、軍用としてEimacあたりでも製造したらしい。トリタンフィラメントで、5V/7.5A、タンタルプレートのロスは100Wであるが、ほぼ同じ規格の100THのプレートの2倍ぐらいの大きさである。規格表には、ヘビーオーバーロードに耐えうると書かれていることからもうなずける。また、見るからに美しく、かつ、堅牢な造りの球である。フィラメント電源は、もちろんSW電源だが、75TLシングルアンプの時に製作したものを使用した。これは最初にフィラメント電源部のSWをONすると、約半分の電圧を254Wに供給して予熱をする。30秒ほどしてアンプ本体のSWを入れると、フィラメント電源部のリレーがONして100%の電圧となる仕組みだ。

254Wは、Ep=1000Vでゼロバイアスなら約100mA流れるから、直結回路で、Ep=800Vで+25VとしてIp=100mA流すことにする。この場合、プレートロスが80Wであるが、まったく赤くならない。試しに100Wとしてもうっすらと赤熱する程度である。100THあたりは、80Wロスで赤熱するが、254Wはプレート面積が大きいため、80Wぐらいでは赤くはならない。音質的には赤熱して使用したいが、電源トランスMS210DRの定格容量を超えるためこのままとした。最大出力は27W/CHである。モノラルで2台製作すれば、50W/CHは期待できそうだ。出力トランスは手持ちの旧タンゴ製、X−5Sを使用した。プレートロス100W級の送信管を使用するなら、シングルの方がPPよりもずっと作り易く、音質的にも優れているように思う。(2018年2月記)




DET16 シングルステレオアンプ

こんどは、DET16 専用のアンプを製作してみた。電源トランスを特注して、整流管整流とした。整流管には、傍熱型半波整流管、836を使用した。836は、傍熱型ということもあり、極めてタフな整流管である。ヒーターは、2.5V/5Aと、866などの水銀整流管と同じだが、使いやすさと丈夫さにおいては比較にならない。水銀整流管の場合、フィラメントの予熱で、分オーダーが必要だが、836は、わずか30秒でよいとマニュアルにある。。また、水銀整流管はリレーなどでONした時、ショックでフィラメントが切れることが多く、チョークインプットが不可欠だが、836なら、コンデンサーインプットでもOKである。836は、1本でMAX250mA取り出せるので、2本両波整流に使用すれば500mA取り出せる。シングルステレオアンプなら充分だ。
また、DET16は、プレート電極が直径20mmとでかいので、自作した。感電防止のためビニルテープで巻いて上部にホーロー抵抗の固定用セラミック板を入れてある。アマチュアなら、創意工夫でなんとでもなるものだ。







845/AB−150 シングルステレオアンプ

845は増幅率が5.6と一桁で、古来オーディオ用として重宝されてきた。増幅率が一桁の送信管は少ないが、このAMPEREXの、AB−150は、数少ない845同等の送信管である。845と比較すると、TOPプレートであり、ガラス容積も太くてでかいので、貫録がある。

そんな、AB150を用いて、新生ISOトランスでシングルステレオアンプに仕上げてみた。ISOトランスでは、かつてのTANGOトランスと同等の製品が、まだ一部ではあるが用意されており、今後その種類も増えていくと聞いているので、頼もしい限りだ。近年、TANGOトランスの中古品がオークションなどで高値を呼んでいるが、わざわざ中古品を新品よりも高値で買うなど馬鹿げている。

さて、旧のTANGO/ISOで、Xシリーズに相当するのが、新生ISOでは、FC40シリーズだ。また、XEシリーズに相当するのが、FC30である。従来のTANGO製品とそのまま置きかえられるのもうれしいかぎりだ。






845装着時




845/AB−150 シングルステレオアンプ NO.2

AB150アンプの第2作で、今度はイントラを使用した。 手元にタンゴNC10があったのでこれを用いた。 NC10では、1:2の昇圧ができるので、211のドライブ電圧で簡単に845のドライブ電圧を得ることができる。 近年はケミコンが小型化されていてシャーシ内に内蔵できるので、従来のケミコンのスペースにイントラを取り付け、さらにディレイ用タイマーの代わりにTVのダンパー管も取り付けた。 ケミコン4個用のスペースを使用する。 三栄無線のアンプに付いていたタイマーでは、小型すぎて耐圧の点で難がある。 ダンパー管のヒーターの立ち上がり時間を利用すれば、リレー接点のバウンシングから解放されてスムーズに高圧が立ち上がる。 かつてのTV用ダンパー管は高耐圧で丈夫であり、5AR4などより、ずっと適している。 かつてTV用に大量に製造されたものが出回っていて価格も安い、使わない手はない。 また、出力管保護用のフューズホルダがあるが、こんなものは無い方がよい、高圧線は最短で配線し、他の線との結束もしてはいけないことは、高電圧工学では常識だ。 もっとも、1KVぐらいでは高圧とは言わないので、そこまで考えなくてもよいのかもしれないが。 ここでは、このフューズホルダの部分に、出力の8オームと16オームの切り替えスイッチを設けた。 トグルスイッチひとつで8と16オームの切り替えができるようにした。
AB150はトッププレート電極でプレートキャップを使用するが、口金の形状が、スカートと呼ぶふくらみがあるので、そのままでは感電の恐れがある。この場合、電気用ビニル絶縁テープを巻いておく。1回巻きで耐圧が約600Vとあるので、3回ぐらいまいておけば十分だ。とはいってもなるべく触らないようにするため、テープは透明とした。またAB150は845などより背が高いので、ボンネットは、背高を特注し、シャーシー上面をすっぽりかぶせることにした。